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SCB工法

工期短縮・経費削減を実現するSCB工法 重仮設カンパニー 工務統括部 設計計画担当課長 藤田範夫

作業員の安全性向上をめざした新工法の開発

ヒロセは、ますます多種多様化する工事環境のなかで、安全性の向上を図り、要求される品質・工期をクリアする最適工法の提案を積極的に行っている。建築・土木における土留め工事でのSCB工法(Sheet pile Counterforted-type Bracing method=控え壁式自立鋼矢板工法)の開発・普及も、その一つだ。
従来、土留め工事では、切梁工法 (注1)とアンカー工法 (注2)が用いられていた。
「SCB工法は、いわば両工法の中間に位置する新工法で、それぞれの欠点を解消した画期的な自立式鋼矢板工法です」と、SCB工法の開発を牽引してきた藤田は言う。では、その開発の狙いはどこにあったのか。

現在、平面規模が中規模以下の土留め工事で広く用いられているのが、所定の深さまで掘削した後に腹起し、切梁などの土留め支保工を設ける切梁工法だ。しかし、切梁工法は、こうした部材の設置・撤去作業が必要になる。しかも、支保工は重量物なので、その設置・撤去にはクレーン作業が伴う。作業員が切梁や腹起しを組み上げているそばで、クレーンによって部材が搬入されることになり、接触や落下など工事現場の作業員の危険度も増す。

「あらかじめ鋼矢板を打ち込んでから掘削する自立式鋼矢板工法ならば、掘削内に支保工を必要としないため、こうした危険は生じません。とはいえ、これまで自立式鋼矢板工法における土留め工事の深さは3〜4mが限界でした。そのため適応できる工事が限られ、切梁工法が一般化しています。自立式鋼矢板工法で対応できる掘削の深さを、たとえば5〜6mにできれば適応可能な土留め工事は格段に広がり、より多くの作業員の安全性向上に役立つ。しかも、腹起や切梁、切梁支柱を使用しないので掘削作業や埋め戻し作業のほか、本体構造物の構築に伴う作業がやりやすく、工期の短縮も可能になる。これを実現する工法として開発されたのが、SCB工法なのです」(藤田)

■各工法の違い
  • 切梁工法
  • アンカー工法
  • SCB工法

(注1)
切梁工法… 土を所定の深さまで掘削した後、切梁や腹起などの支保工を設置し、土留めする工法。現在、土留め工事で最も多く用いられている。

(注2)
アンカー工法… 土を所定の深さまで掘削した後、アンカーと呼ばれる鋼線を束ねたものを土留め壁背面の地盤に打ち込み、土留めする工法。主に面積が広く、敷地の境界に余裕がある現場に用いられる。

深さ5〜6mの土留め工事対応への挑戦

そもそも最初にSCB工法の開発に着手したのは、大分に本社を置く総合建設会社、(株)さとうべネックだった。1997年に同社が特許を出願し(2000年特許取得)、翌'98年にはNETIS(国土交通省の新技術情報提供システム)に登録。以後、ヒロセはさとうべネック社からの依頼を受け、SCB工法実用化のための共同研究のパートナーとして開発を牽引していくことになった。
「実用化のための本格的な研究開発をスタートしたのは、2000年にさとうべネック社と一緒にSCB工法研究会を発足してから。その年には、深さ5〜6m に適応可能なSCB工法の設計要領を作成し、翌01年には、独立行政法人産業安全研究所との共同研究という形で、工法設計を科学的に裏付けるための遠心載荷実験も開始しました」(藤田)
なぜ、自立式鋼矢板工法でありながら、深さ5〜6mの土留め工事に適応できるようになったのか。それを可能にしたのが、SCB工法に採用された独自の構造だ。
「土留め壁背面に、控え壁と支圧壁からなる控え構造を設けたのです。それを所定の間隔で配置し、抵抗力を安定させることで自立高さを向上させました。これにより、土留壁のたわみ量の制限が厳しい場所でなければ5〜6mの掘削に対応でき、平面規模が20m×20m程度以上であれば切梁などを使用しないことでのコストメリットも発揮されやすくなります」(藤田)
また、控え構造の形成には、T型に加工した鋼矢板を打設して土留め壁に連結する方法のほか、周囲への騒音・振動を考慮して低騒音型の油圧圧入機(サイレントパイラーなど)で専用に加工した鋼矢板を打設する方法も開発した。
遠心載荷実験での結果も含め、藤田は、SCB工法が実用可能な最適化工法であることは確信していた。
「しかし、施工実績を積み重ねなければ、SCB工法に対する評価と信頼は得られません。SCB工法による全面施工案件の獲得。それが次の課題でした」(藤田)

■SCB工法の構造
  • 構造イメージ
  • 控え構造の形状
  • 側面から見た様子
■遠心載荷実験
  • 上面
  • 掘削機設置完了後側面
■低騒音型の油圧圧入機

年々増加する施工実績はSCB工法の信頼性の証し

2001年以降、藤田たちはSCB工法の認知度を高めるべく、各種新聞にプレスリリースを発表するほか、地盤工学研究発表会で研究論文を発表したり、九州建設フェアでSCB工法の模型を展示したりするなど、積極的にPR活動を展開していった。
そして、2001年、早くも藤田たちにSCB工法の施工チャンスが巡ってきた。

「宮崎県の排水処理施設の築造工事で、発注者の施工計画では深さ6mの土留め工事を3段の切梁工法で行う予定になっていました。平面規模は約20m×30m。まさにSCB工法のコストメリットが発揮される規模の案件でした」(藤田)
この現場担当者は、切梁工法による計画に工期の不足をはじめとした施工上の不都合を感じており、藤田に土留め工事の提案を依頼したのである。その結果、施工の安全性はもとより、工期の短縮効果、コストメリットが理解され、初の全面SCB工法による施工が実施されることになった。
「SCB工法での施工により、7ヶ月程度の工期を約1ヵ月間短縮することができ、工費も約2割削減できたと聞きました。また、何より現場の作業員の方が『工期の不足や作業性の悪さを感じず、安心して工事ができる』と喜んでくださったのが嬉しかったですね」と藤田が言うように、SCB工法の有効性が実証される結果となった。

以後、2002年には1件、'03には6件、そして'04年には12件と、年を追うごとにSCB工法は全国で施工実績を重ね、05年には、その実用化に尽力した藤田他3名が文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞するほど、SCB工法の革新性が広く社会に認められている。

■施工例
  • 14柿改第301号横流式沈でん池土木・建築工事
  • 稚内港岸壁改良外一連工事
  • 細江長嶺地区農業集落排水処理施設築造工事
  • 宗岡浄水場既設構造物撤去工事
  • 都城市総合文化ホール建設工事
  • 授賞式後

永久構造物への適応も視野に

「SCB工法は、実用化開発の第一段階が終了したところ。現在は、その開発を第二段階へと進めています」(藤田)
というのも、藤田は施工実績を積み重ねるなかで土留壁のたわみ量や強度などのデータを収集・解析し、SCB工法は地盤条件さえ揃えばさらに深い7〜8mの掘削にも対応できる工法であることを実感しているからだ。
「施工例での実際の計測値を開発にフィードバックし、設計手法の改善を進めながら、SCB工法の適応工事範囲をさらに広げていくことが今後の課題です。将来的には仮設工事だけでなく、永久構造物への適応も可能であると考えています」(藤田)
工事の安全性向上はもちろん、工期短縮や経費削減が大きな課題となっている時代にあって、SCB工法の可能性はさらに拡がりつつある。そして、ヒロセはそうした時代の要請に応えるべく、SCB工法のさらなる進化を牽引している。人にやさしい工法の普及をめざして。